鳴き砂とは

鳴き砂とは

鳴き砂は鳴り砂ともいいますが、ちょっと動かせば音が出る砂のことで、その昔、日本列島には至るところに真っ白な砂浜があり、足跡一つない砂の上を歩けば「クックッ」と鳴きましたが、現在では限られた浜しか鳴くことはありません。

古代中国では鳴沙と呼ばれましたが、日本では特別な呼び名はありませんでした。英語では海辺にある鳴き砂のことをミュージカルサンド(音楽砂)とかシンギングサンド(歌う砂)などと呼びますが、砂漠にあるものは、巨大な砂山の砂が自然に崩れ落ちたとき轟音を発するので、特にブーミングサンド(唸る砂)と呼ばれています。

なぜ砂が鳴くの?

鳴き砂の主成分は石英です。石英の砂粒は、きれいな水や空気の中で充分洗われると表面の摩擦係数が極端に大きくなるという特性があります。そのため、触れたり踏んだりして砂に力が加わったとき、ある限界まではグッともちこたえますが、さらに大きな力が加わると耐えきれずに動きます。動けば加わった力が開放されて砂は静止します。これを繰り返すことによって、砂粒がばらばらでなく一団となって振動し始めて音が出るわけです。反対に、タバコの灰などで少しでも汚れると砂はたちまち鳴かなくなります。普通の砂は石英の含有量が少ないとともに、たいてい砂粒の表面が汚れていて鳴くことはありません。

琴引浜の鳴き砂の顕微鏡写真琴引浜の鳴き砂の顕微鏡写真

鳴き砂の音はなぜ魅力的?

クックッという鳴き砂の音はなぜか魅力的で、だれもが自分で鳴かせてみたくなります。なぜでしょうか。人間にとって一番心地よく感じる音の周波数は440ヘルツといわれており、ドレミファのラの音になります。オーケストラが演奏前に行う音合わせも、基本は440ヘルツの音で全部の楽器が合わせるということです。そして、鳴き砂の音も400ヘルツ前後に基本周波数があるため、心地よく感じ魅力的なのです。

砂の鳴かせ方

琴引浜で砂を鳴かせる場合、大切な条件があります。それは砂が乾いていることで雨や波しぶきで砂が湿っていると鳴きません。また、砂が乾いていても普通に歩くだけでは砂が鳴いているかどうかよく分かりません。足をするように歩くとよく分かります。一番よい方法は、手で砂の表面を強く掃くようにすることです。さらに両手を広げ砂を寄せるようにするとさらに大きく良い音で鳴きます。ただし、乾いている砂の下は湿っていますので、表面の乾いている部分だけでやってみるのが大切です。

地球誕生の記憶「高温石英」

鳴き砂を顕微鏡で見ると、見事な結晶面が残る水晶の形をした砂粒を見つけることができます。これが高温石英で、地球が誕生し冷却したとき、高温のマグマの中で、無重力状態で結晶化したものです。まさに、地球創生のロマンを物語る結晶といえます。

琴引浜の高温石英の結晶琴引浜の高温石英の結晶